社長あいさつ

ご挨拶

弊社で作っているサクソフォンは、およそ180年前にベルギー人のアドルフ・サックス氏が発明した新しい楽器です。バイオリンやピアノなどに比べると、その歴史は浅く楽曲もそうですが、楽器としての完成度も発展途上といえるでしょう。まだ、いくらでも成長(改良)させる可能性があります。
日本の管楽器製造は、初代柳澤徳太郎が明治27年(1894年)に軍楽隊の輸入管楽器の修理を始めたのが起こりとなります。この修理工房が、戦時という時代背景と共に楽器工場に変わり、日本での管楽器生産が始まりました。
昭和26年(1951年)先代柳澤孝信が楽器作りを志し、手始めにサクソフォンを試作しだしたのがこの年です。日本でもサクソフォンは作られていましたが、輸入品に比べ子供の玩具のようなものでした。世界では当時、現在でも使われている名器といわれるようなサクソフォンが艶を競っていたのです。

弊社の名前に管楽器と付いているのは、サクソフォンを完成させたら色々な楽器を作りたいとの思いからです。世界で通用するもの、なかでも作るのが難しいといわれるサクソフォンを手掛け、それから70年。先代の教えを守りながら、サクソフォンー筋で現在に至っています。
ようやく楽器らしくなってきたのは30年位前。未だに満足できる楽器に仕上がっていません。育てることの難しさを味わっています。楽器作りは形を作ることではなく、そこから出てくる音を創っているのです。音を創ることは楽器を育てることなのです。屁理屈と思われそうですが、心からそう思うのです。

  • サクソフォン(楽器)に生命があると言ったら信じてもらえますか?
  • 作り手の気持ちや心が、作るという作業を通じて、楽器に入り込むと言ったら信じてもらえますか?
  • 手作りと、機械で作ったもの。どちらが心がこもっていると思いますか?

楽器作りは、形を作るのではなく音を創ることで、目に見えない精神的なものがプラスされなくては良い楽器にはなりません。
製作段階では機械も大いに活躍しますが、そのうえに製作者の思いと、手工的な技術が加味されてこそ生命ある楽器になるのです。
楽器は生きていると信じています。製作者の姿勢次第で、形作って魂入れず。
形骸化した楽器になってしまいます。楽器は工業製品とは違います。
作り込む気持ち、形に生命を宿らせてこそ楽器作りだと思っています。
創業当初から、この基本姿勢は変わることなく今に引き継がれ、サクソフォンという楽器の上に反映されていると確信しております。
評価は自分でするものでなく、他の人がしてくれるものです。
演奏家が道具としてのサクソフォンを使い、演奏家の思いに応えてくれる楽器だと言ってくれるまで、精進を重ね、試行錯誤し、演奏家や楽器の声に耳を傾けて作り続けることでしょう。
皆さんがステージで見たり聞いたりするサクソフォンの演奏は、言い換えれば楽器作りの最終工程なのです。
楽器と作る姿勢は全く変わっていません、これからも変わる事はないと思います。

代表取締役社長 
柳澤 信成